離婚時にマンションを売らずに財産分与する際のトラブル事例と対策法

離婚時にマンションを売らずに財産分与する際のトラブル事例と対策法

厚生労働省が発表した「人口動態統計(確定数)」によると、平成28年(2016)年の国内離婚件数は21万6798組。

1年間でこれだけ多くの夫婦が離婚しているのですから、夫婦で築いた財産を分ける「財産分与」では様々なトラブルが発生しがちです。

そのなかでも、財産分与の話し合いでトラブルが発生しやすいのが「夫婦で購入した家」の扱い。

とくに、自宅を売らずに夫婦のどちらかが貰う場合は「家の名義(所有権)」や「住宅ローン返済」のことで揉めやすく、離婚した後もトラブルを招く原因になります。

そのため、財産分与トラブルを予防するには「どのような揉め事が発生しやすいか」をあらかじめ知っておくことが大切。

そこで、自宅を売却せずに財産分与した場合の「トラブル事例」や「予防対策」についてご紹介します。

はじめに、自宅の名義が「夫婦の共有名義」の場合に起こりやすい「名義トラブル」から見てみましょう。

離婚後も共有名義のままにしておくことで発生しやすいトラブル

夫婦で住宅ローンを利用して分譲マンションを購入した場合、家の名義(登記簿に記載されている所有者名)は「夫婦の共有名義」になっています。

ですから、離婚時に夫婦のどちらかが自宅を貰ったら、家の名義を自分1人の「単独名義」に変更しなければなりません。

しかし、住宅ローンを利用中の場合、自宅の名義変更をするためには、住宅ローン融資を受けた金融機関(銀行)の承諾が必要。

とはいえ、銀行側にしてみれば、夫婦の合算収入で住宅ローン審査を受けている場合、夫または妻だけの収入では返済不能になるリスクが高くなります。

そのため「住宅ローンを完済する」もしくは「銀行が認める経済力のある人物を保証人に立てる」などの対策がなければ、自宅の名義変更は困難。

このような理由から、財産分与で実質的には夫婦どちらか1人の所有物になっていても、離婚後も自宅の名義が「共有名義」のままになっていることよくあります。

ところが、自宅を夫婦の共有名義のままにしておくと、離婚後にトラブルを招く原因になるのです。

そこで、離婚後に共有名義が原因で起こるトラブル事例を2つ見てみましょう。

元配偶者が自宅売却に応じない。

通常、共有名義の家を売却する場合、共有者全員の同意と承諾が必要です。

そして、家の売買手続きをする時も、共有者全員の署名と捺印がなければ売却契約は成立しません。

しかし、夫婦仲が悪くなって離婚しているため、家を出た元配偶者が必ずしも自宅の売却手続きに協力してくれるとは限らないのです。

とくに、円満な離婚ではなかった場合、元配偶者がわざと売却に同意しなかったり、場合によっては、連絡すら取れなくなってしまうこともあります。

そのため、離婚後も自宅を共有名義のままにしておくと、売却がとても難しくなるのです。

そのため、離婚後も自宅を共有名義のままにしておくと、売却がとても難しくなるのです。

元配偶者の死亡で相続トラブルに巻き込まれる。

また、自宅の名義を共有名義のままにしておくと、元配偶者の死亡により、思わぬ「相続トラブル」に巻き込まれる可能性もあります。

離婚後も自宅が共有名義の場合、家を出た元配偶者が死亡すると、法律上、元配偶者の「自宅の持分割合(所有権の一部)」は「再婚相手」や「元配偶者の親族」が相続。

つまり、自宅の所有権のうち、元配偶者の持ち分割合(所有権の一部)が、見ず知らずの他人に移動してしまう可能性があるのです。

つまり、自宅の所有権のうち、元配偶者の持ち分割合(所有権の一部)が、見ず知らずの他人に移動してしまう可能性があるのです。

そのため、実際は離婚時に、持分割合の清算は済んでいても、事情を知らない元配偶者の再婚相手や親族から「持ち分割合の現金での精算」を求められる場合もあるのです。

そのため、実際は離婚時に、持分割合の清算は済んでいても、事情を知らない元配偶者の再婚相手や親族から「持ち分割合の現金での精算」を求められる場合もあるのです。

このように、離婚後も自宅を共有名義のままにしていると、元配偶者の持分割合(所有権)が、相続などで他人に渡ってしまう可能性があるので対策が必要。

そこで、離婚時には、財産分与の内容を証明するために「公正証書(こうせいしょうしょ)」の作成をおすすめします。

離婚後の「共有名義トラブル」を予防する方法

公正証書とは、法務大臣が任命する裁判官や検察官、弁護士などから選ばれる公証人が作成する公文書のこと。

そのため、財産分与の内容を公正証書にしておくと、離婚後にトラブルが発生した場合「強力な証拠」となるだけでなく、財産分与や共有名義のトラブル予防にもなります。

なお、公正証書は「公証役場(こうしょうやくば)」で作成することができ、原本は役場で保存されるので紛失の心配もありません。

公正証書は「公証役場(こうしょうやくば)」で作成することができ、原本は役場で保存されるので紛失の心配もありません。

公証役場ってどこにあるの?

しかし、公証役場は日常生活で利用することはほとんどなく、オフィスビル内にある場合も多いので「どこにあるのか知らない」という人も多いと思います。

そこで、最寄りの公証役場は、日本公証人連合会のホームページで検索してみてください。

参考元:日本公証人連合会「交渉役場一覧」

また、共有名義トラブルを予防には、離婚時に公正証書を作成した後、住宅ローンを完済したら、すぐに自分の単独名義に登記簿を変更しておくことも大切です。

ここまで「家の名義」が原因で発生しやすいトラブル事例を見てきました。
しかし、財産分与で起こりやすいトラブルの原因は名義だけではありません。

「住宅ローンが残っている自宅」に、妻と子供が住み続けることもトラブルになりやすいので注意が必要です。

そこで、離婚後に「住宅ローン」が原因で発生するトラブルを見てみましょう。

ローン返済中の家に妻と子が残ることで発生しやすいトラブル

離婚後、夫が家を出て、妻と子供が自宅マンションに残ることはよくあります。

しかし、住宅ローンを完済していない家に住み続けることはとても危険です。

とくに、妻にパート程度の経済力しかなく、家を出た夫が慰謝料や養育費の代わりに住宅ローンを支払う約束になっている場合、妻と子は安心して暮らすことができません。

なぜなら、元夫が住宅ローンを払い続ける保証は何もないからです。

そこで、住宅ローンが残る家に妻と子が住み続けることで起こるトラブル事例を2つご紹介します。

元夫が住宅ローンを返済しない

通常、住宅ローンは新築マンションであれば、35年もの長期ローンです。

そのため、離婚後に元夫が病気やリストラで経済的に苦しくなり、住宅ローンの返済が困難になる可能性も十分にあります。

また、元夫が再婚して新しい家庭ができると、離婚時に約束した住宅ローンの返済を拒否するかもしれません。

ですから、妻が元夫の「住宅ローンの保証人」になっている場合はとても危険。

元夫に返済能力がなくなると、住宅ローンを融資した金融機関は、保証人である妻に住宅ローンの「一括返済」を請求します。

つまり、財産分与で住宅ローン返済中の家を貰うと、莫大な借金を背負う可能性もあるのです。

元夫に返済能力がなくなると、住宅ローンを融資した金融機関は、保証人である妻に住宅ローンの「一括返済」を請求します。

自宅マンションが競売にかけられる

そして、住宅ローンを滞納すると、早ければ3ヵ月で自宅は差し押さえされて「競売」にかけられます。

住宅ローンを借りた先が都市銀行や信用金庫であれば「滞納3ヶ月」、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の場合は「滞納6ヶ月」が競売の目安です。

そのため、妻に住宅ローンを返済するだけの経済力がなく、元夫の返済に頼っている場合は要注意。

裁判所から「競売開始決定」の通知や、自宅を調査するための「執行官の訪問」があると、その数ヶ月後には「自宅からの強制退去」を命じられることになります。

ですから、財産分与で住宅ローン返済中の自宅を貰うと、住む家を失うリスクもあるのです。

裁判所から「競売開始決定」の通知や、自宅を調査するための「執行官の訪問」があると、その数ヶ月後には「自宅からの強制退去」を命じられることになります。

では、離婚後の「住宅ローントラブル」を予防するにはどうすればよいのでしょうか?

離婚後の「住宅ローントラブル」を予防する方法

財産分与で住宅ローン返済中の自宅を貰う場合、妻に住宅ローンを返済するだけの十分な経済力がなければ高いリスクが伴います。

ところが、子供のためにリスクを承知で自宅を貰う人が多いのも現実。

しかし、住宅ローンがある家は「マイナスの財産」であることを忘れてはいけません。

もしも、離婚時に住宅ローンを完済して、家の名義を自分の「単独名義」に変更できないのであれば、家を貰わずに「現金」で慰謝料や養育費を貰うことをおすすめします。

また、妻が夫の住宅ローンの「保証人」になっている場合は、元夫に十分な経済力があっても、離婚時に保証人から外してもらうように交渉することも大切です。

このように「住宅ローン」も離婚後のトラブル原因になります。

ただし、同じ住宅ローンでも「夫婦名義で住宅ローンを借りている場合」は、最も危険度が高くなるので要注意。

離婚時に、夫婦名義で住宅ローンを借りている自宅を貰うと、先にご紹介した「名義トラブル」と「住宅ローントラブル」の両方のリスクを背負うことになるのです。

そこで、夫婦名義で住宅ローンを借りている自宅を貰うリスクを見てみましょう。

夫婦名義で住宅ローンを借りている場合の財産分与リスク

自宅マンションを購入するときに、夫と妻の収入を合算して住宅ローンを借りた人も多いと思います。

この場合、住宅ローンの主債務者は「夫と妻の双方」。

そのため「フラット35」などの住宅ローンを夫婦で利用した場合、夫と妻にはそれぞれ「連帯債務」の責任があります。

連帯債務で住宅ローンを利用するリスク

連帯債務とは、1つのローン契約に対して夫と妻が同等の返済責任を負う債務のこと。

ただし、金融機関(債権者)は、連帯債務者に対して「返済金の割合」や「請求の順序」などを自由に設定することができます。

つまり、住宅ローンを夫婦の連帯債務契約で借りると、夫の返済能力や所有権の持分割合に関係なく、妻だけにローン返済の請求が来る可能性もあるのです。

つまり、住宅ローンを夫婦の連帯債務契約で借りると、夫の返済能力や所有権の持分割合に関係なく、妻だけにローン返済の請求が来る可能性もあるのです。

住宅ローンを夫婦で折半していた夫婦は要注意

また、夫婦の収入合算で住宅を購入した場合、夫と妻が折半して住宅ローンを負担しているのが一般的。

そして、妻にもある程度の経済力があり、日ごろから「自分で住宅ローンを返済している」という意識もあるので、連帯債務の重責を忘れがちです。

そのため、妻にある程度の収入がある場合、財産分与の際に自宅を貰うことを安易に選択しやすいので要注意。

住宅ローンの連帯債務から外れないまま離婚すると、元夫がローンを返済する約束をしていても、妻はローンを完済するまで安心できません。

妻が1人で月々のローン返済金を全額負担することになったり、最悪の場合、一括返済を請求される危険性もあります。

ですから、自身でローンを完済する意思がない場合、財産分与で自宅を貰うことはおすすめできません。

では、離婚後に「連帯債務トラブル」を回避するにはどうすればよいのでしょうか?

離婚後に「連帯債務トラブル」を予防する方法

連帯債務で住宅ローンを利用している場合、離婚時に自宅を売却することが一番のトラブル予防です。

でも、せっかく苦労して住宅ローンを返済してきたので、自宅を売却するのはもったいないと思う人がいるかもしれません。

しかし、離婚時に自宅マンションを売却すると、自宅を手放すことにはなりますが、連帯債務トラブルを回避できる以外にもメリットがあるのです。

離婚時に自宅マンションを売却する4つのメリット

離婚時に自宅マンションを売却すると、主に4つのメリットがあります。

  • 連帯債務や連帯保証人の責任がなくなる。
  • 元配偶者との関わりを無くすことができる。
  • 自宅マンションを高い価格で売却できる。
  • 離婚後に家を購入しやすい。

それでは、離婚時に自宅を売却するメリットを詳しく見てみましょう。

連帯債務や連帯保証人の責任がなくなる

自宅を売却して住宅ローンを完済することができれば、連帯債務や連帯保証人、ローン返済の心配がなくなります。

ただし、自宅の売却代金だけではローンを完済できない場合、夫婦の共有財産(預貯金)からの補てんが必要。

そのため、離婚時に自宅を売却して住宅ローンの完済に預貯金を使うと、財産分与で受け取る金額が減るデメリットがあります。

しかし、連帯保証人や連帯債務の重責など、離婚後の生活を考えれば、預貯金の補てんをしてでも自宅の売却をしたほうが、経済的にも精神的にも楽になるのです。

元配偶者との関わりを無くすことができる

離婚後も住宅ローンが残ると、ローンを完済するまでの間、自宅の名義に元配偶者の名前が残ったり、不動産手続き等で元配偶者に連絡を取り合う必要もあります。

そのため、離婚時に自宅を売却しておくと、元配偶者との関係性を断ち切ることができます。

また、先の名義トラブル例でもご紹介したような「元配偶者の相続トラブル」に巻き込まれることもありません。

自宅マンションを高い価格で売却できる

分譲マンションの場合、一戸建てとは違って土地の面積が少ないので、築年数と共に確実に資産価値は減少します。

しかし、離婚を機に1年でも早く自宅を売却することができれば、それだけ高値での売却が期待できるのです。

そして、自宅を高く売ることができれば、自宅の売却代金で住宅ローン完済も可能。

もちろん、売却代金でローンを完済して余剰金があれば、夫婦で平等に分けることもできます。

離婚後に家を購入しやすい

離婚後に、家を出た妻が子供と住むための家を購入したり、再婚して新居を購入する場合もあります。

しかし、元の自宅の連帯保証や連帯債務のままでは、よほどの経済力や担保でもない限り、新たに住宅ローンを組むことや保証人になることは困難。

そのため、あらかじめ自宅を売却しておけば、離婚後に家を購入しても住宅ローン審査に影響しません。

また、自宅を売却することで、財産分与で受け取る金額が増える場合もあります。

すると、財産分与の資金を頭金にして、無理のない新居購入計画を立てることもできるので、自宅を売却したほうが、離婚後に家を購入しやすくなるのです。

このように、離婚時に自宅を売却する選択には複数のメリットがあります。

連帯保証人や連帯債務のままの状態で家を財産分与で貰っても、住宅ローンが返済できなければ「マイナスの財産」でしかありません。

ですから、連帯債務で住宅ローンを借りている場合は、離婚時に自宅を売却してローンを完済する選択を最優先で検討するようにしましょう。

自宅の売却を検討する前に、まずは家の不動産価値を調べましょう

そして、自宅の売却を検討する時には、不動産会社に価格査定を依頼して、自宅の「不動産価値(売却予想価格)」を調べておくことも大切。

自宅の不動産価値を調べておくと「売却代金で住宅ローンの完済が可能か」を判断できるので、自宅が「プラスの財産」なのか「マイナスの財産」なのかもわかります。

ただし、不動産会社の査定価格は、会社によって金額が違うので要注意。

自宅を不動産会社に査定してもらう時は、不動産一括査定サイトなどを利用して、必ず複数の会社に査定を依頼して「相見積もり」をとりましょう。

すると、各不動産会社の査定価格や物件評価を比較できるので、自宅の売却を冷静に判断できます。

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